専門調理師とは、長年の実務経験と高い調理技術を持つことを公的に証明できる国家資格です。調理師免許を取得し、現場で経験を積んだ人が目指す、ステップアップのための資格といえます。
この記事では、専門調理師と調理師の違いをはじめ、受験資格や試験内容、取得するメリットまで解説します。
新卒から専門調理師を目指す道のりも紹介するので、料理人として長く働きたい人は参考にしてください。
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専門調理師とはどんな資格?

専門調理師は、調理師免許を持ち、一定期間の実務経験を積んだ人が目指せる資格です。
具体的にどのような資格なのか、合格すると得られる2つの称号とあわせて見ていきましょう。
専門調理師は調理師免許の上位資格
専門調理師とは、国が定める「調理技術技能評価試験」に合格した人へ与えられる称号です。
調理師免許を取得したあとに現場で長く経験を積んだ人が目指すことから、一般的には調理師免許の上位資格やステップアップ資格として紹介されています。
この国家試験制度は、昭和57年(1982年)に始まりました。現在は、厚生労働大臣から指定を受けた「公益社団法人調理技術技能センター」が試験を実施しています。
原則として実技試験と学科試験の両方があり、合格すると厚生労働大臣から認定・合格証書が交付されます。
ただし、専門調理師は、持っていなければ調理の仕事ができない資格ではありません。
調理師免許のように都道府県知事が交付する免許ではなく、長年の経験と専門的な調理技術を証明するための資格です。
求人票などで「専門調理師免許」と表現されることもありますが、調理師免許とは制度上の位置づけが異なります。
専門調理師は「調理技能士」も同時に名乗れる
調理技術技能評価試験に合格すると、「専門調理師」と「調理技能士」という2つの称号が与えられます。
呼び名が2つあるのは、根拠となる制度が異なるためです。
- 専門調理師:調理師法にもとづいて与えられる称号
- 調理技能士:職業能力開発促進法にもとづいて与えられる称号
調理技能士は、大工や機械加工など、さまざまな職種に設けられている「技能士」の調理分野にあたります。
受ける試験は1つです。合格すれば、専門調理師と調理技能士の両方を名乗れるため、履歴書にも2つの称号を記載できます。
専門調理師と調理師の違いを表で比較

「調理師」と「専門調理師」では、資格の取り方や証明できる内容が異なります。
調理師免許は、調理師養成施設を卒業するか、実務経験を積んで調理師試験に合格することで取得できます。養成施設を卒業する場合は、就職前に取得することも可能です。
調理師免許がなくても調理の仕事には就けますが、「調理師」と名乗れるのは免許を持つ人だけです。
一方で専門調理師は、調理師免許を持ったうえで実務経験を積み、特定の料理分野に関する知識と技術を試験で証明する資格です。
主な違いをまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | 調理師 | 専門調理師 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 調理に関する国家資格・免許 | 経験と専門技術を証明する国家資格 |
| 取り方 | 養成施設卒業または調理師試験合格後に申請 | 調理技術技能評価試験に合格 |
| 実務経験 | 養成施設卒業なら不要 | 学歴・訓練歴により6~8年以上 |
| 証明できること | 調理師として必要な知識を身につけていること | 特定の料理分野で専門的な知識・技能を持つこと |
| 取得できる時期 | 就職前でも可能 | 現場で経験を積んだあと |
| 調理師学校での指導 | 免許だけでは教員資格にならない | 調理師学校の教員資格が与えられる |
専門調理師の受験に必要な実務経験が6~8年と異なるのは、調理師養成施設の卒業や職業訓練の修了状況によって、必要な年数が変わるためです。
また、「調理師学校の教員資格が与えられる」といっても、小中学校や高校の教員が持つ教育職員免許状とは異なります。
専門調理師の資格を取得すると、調理師養成施設で調理実習などを教えるための資格を得られるという意味です。
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専門調理師になるには?受験資格と試験内容

専門調理師になるには、必要な実務経験を積み、調理技術技能評価試験に合格しなければなりません。
受験資格や試験内容には細かな決まりがあるため、順番に確認していきましょう。
受験資格は「調理師免許+6~8年の実務経験」
専門調理師の受験に必要な実務経験は、調理師養成施設の卒業や職業訓練の修了状況によって異なります。
「調理技術技能センター」が示す受験資格は、次のとおりです。
- 厚生労働大臣が指定する調理師養成施設で1年以上学んで卒業した人:実務経験6年以上
- 調理に関する所定の職業訓練を修了した人:実務経験7年以上
- 上記に該当せず、実務経験によって受験する人:実務経験8年以上
どの場合も、必要な実務経験のうち3年以上は、調理師免許を持った状態で働いていることが条件です。
例えば、免許を取る前に2年間、取得後に4年間働いた場合、合計6年間の実務経験として通算できます。養成施設の卒業者でそのほかの条件も満たしていれば、受験資格に届く可能性があります。
ただし、飲食業界で働いた期間がすべて実務経験として認められるわけではありません。
次のような仕事や職場は、原則として対象外です。
- 接客、会計、配達、食器洗浄など、直接調理をしていない仕事
- 喫茶店営業の許可だけを受けた施設での勤務
- ケーキやデザート、パンの製造を中心とする仕事
- 食品開発業務の一部として行う調理
- 海外の飲食店での勤務
実務経験として認められるのは、主に次の施設で行う調理業務です。
- 寄宿舎、学校、病院などの給食施設
- 飲食店営業の許可を受けた施設
- 調理を伴う魚介類販売業
- そうざい製造業・複合型そうざい製造業
勤務先が対象でも、担当しているのがホールや洗い場だけであれば、実務経験には含まれません。
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なお、令和8年度の受験手数料は、受ける試験によって次のように決まっています。
| 受ける試験 | 受験料 | 免除の条件 |
|---|---|---|
| 実技試験のみ | 28,900円 | 学科試験に合格済み、または養成施設卒業後に技術考査へ合格 |
| 学科試験のみ | 8,900円 | 同じ料理区分の実技試験に合格済み |
| 実技試験と学科試験の両方 | 37,800円 | 免除なし |
学科試験の免除対象には、調理師熟練者講習の修了者なども含まれます。
条件は細かく決められているため、受験するときは必ず公式サイトの最新情報を確認してください。

試験内容と選べる6つの分野
調理技術技能評価試験には、学科試験と実技試験があります。
学科試験は全分野に共通する40問と、選択した料理区分に関する専門問題20問で構成されています。
共通問題で問われる主な内容は次のとおりです。
- 食品衛生・公衆衛生
- 食品・栄養
- 調理師法や食品衛生法などの関係法規
- 調理器具や作業に関する安全衛生
実技試験では、次の6分野から1つを選びます。
| 時期 | 実技で選択可能な分野 |
|---|---|
| 前期 | ・すし料理 ・中国料理 ・給食用特殊料理 |
| 後期 | ・日本料理 ・西洋料理 ・麺料理 |
前期と後期では、受けられる料理分野が異なります。また、前期・後期で受験できるのは、それぞれ1つの料理分野のみです。
6分野のうち「給食用特殊料理」は、学校や病院、福祉施設などで提供する給食の調理技術を対象とした分野です。給食の現場で経験を積み、その技術を証明したい人にとって選択肢になります。
給食施設で働いている人が必ずこの分野を選ばなければならないわけではありません。自分が経験を積んできた仕事内容や、証明したい専門分野に合わせて選びましょう。
なお、試験日程や実施場所は年度によって変わります。実際に受験する年の情報を公式サイトで確認してください。
合格率と難易度
合格基準は、実技試験と学科試験で異なります。
| 試験 | 採点方法 | 合格基準 |
|---|---|---|
| 実技試験 | 減点法 | 満点の60%以上 |
| 学科試験 | 正答数から誤答数を差し引く真偽法 | 差し引いた数が問題数の50%以上 |
学科試験は、単純に正答数だけで判定する試験ではありません。誤答すると正答数から差し引かれるため、試験の方式を理解したうえで対策する必要があります。
公式サイトでは、年度別・分野別の合格率を継続的に公表していません。
参考として、民間の解説記事では、平成30年度から令和2年度までの実技試験の合格率が53.9~67.8%だったと紹介されています。
ただし、合格率だけで難易度を判断することもできません。
受験者は、すでに6~8年以上の実務経験を積んでいる人です。そのなかで、決められた時間や手順に沿って専門的な技術を示す必要があります。
専門調理師は、現場で身につけた技術を試験で証明する資格だと考えておきましょう。
専門調理師の資格を取得するメリット

専門調理師を取得する主なメリットを紹介します。
調理の腕を資格で示せる
専門調理師を取得する大きなメリットは、経験や技術を公的な資格として示せることです。
料理の腕は、資格がなくても現場で評価されます。しかし、ほかの企業へ転職するときや、初めて会う相手へ自分の技術を伝えるときは、これまでの経験だけでは実力を説明しにくい場合があります。
専門調理師を取得していれば、「日本料理」「西洋料理」など、自分が経験を積んできた分野の知識と技術を、国家試験に合格した実績とともに伝えることが可能です。
履歴書に記載できるだけでなく、転職や独立の際に自分の経験を説明する強みになるでしょう。
料理長など上のポジション・待遇アップにつながることがある
専門調理師の資格は、高い調理技術を持つことを公的に示せるため、料理長や部門責任者などを目指す際の評価材料になる可能性があります。
資格手当を設けている勤務先であれば、待遇アップにつながることもあります。
ただし、資格を取得すれば必ず昇進・昇給できるわけではありません。
責任ある役職では、調理技術に加えて、次のような力も求められます。
- スタッフをまとめる力
- 後輩へ技術を教える力
- 食材や原価を管理する力
- 厨房全体の状況を見て判断する力
資格を取ることだけを目的にせず、現場で必要な経験も積みながら、将来のキャリアに活かすことが大切です。
参考として、厚生労働省の「job tag」では、西洋料理調理人などが属する職業分類の平均年収を379.1万円としています。
この金額は専門調理師だけを集計したものではなく、さまざまな立場の西洋料理調理人などを含む数値です。専門調理師を取得した場合の年収を示すものではないため、調理人全体の目安として見ておきましょう。
職場による違いや年収を上げる方法は、以下の記事で詳しく紹介しています。

調理師学校の先生になる道が開ける
調理技術技能評価試験に合格すると、調理師学校の教員資格も与えられます。
「調理技術技能センター」の公式サイトにも、専門調理師・調理技能士の称号とあわせて、調理師学校の教員資格が与えられると明記されています。
これは、小中学校や高校の教員が持つ教育職員免許状とは別の資格です。調理師養成施設で、調理実習などを指導するための資格にあたります。
また、資格を取得すれば、必ず調理師学校へ就職できるわけではありません。実際の採用では、勤務経験や指導力、学校が求める条件なども確認されます。
それでも、現場で身につけた技術を次の世代へ伝えたい人にとって、将来の選択肢を増やせる資格です。
新卒から専門調理師を目指す方法

専門調理師は、調理師免許と6~8年以上の実務経験が必要なため、新卒ですぐに取得できる資格ではありません。
今の段階で、受験対策まで始める必要はないでしょう。まず考えたいのは、調理師免許をどのように取得するかと、どのような職場で経験を積むかです。
調理師養成施設を卒業する人は、卒業後に免許を申請し、調理の仕事へ就くのが一般的です。
調理師養成施設を卒業していない人は、対象となる施設で2年以上調理業務を経験し、調理師試験に合格して免許を取得する方法があります。
そのうえで、専門調理師を目指すなら次の点を意識して職場を選びましょう。
- 実務経験として認められる施設か
- ホールや洗い場ではなく、実際に調理を担当できるか
- 希望する料理分野の技術を学べるか
- 経験に応じて任される仕事が増えるか
- 先輩や料理長から技術を学べる環境か
必要な年数だけを見ると、遠い目標に感じるかもしれません。しかし、新卒の時点で専門調理師になるまでのすべてを決める必要はありません。
まずは、調理の基礎を身につけられる職場を選び、目の前の仕事を一つずつ覚えることが大切です。経験を重ねた先で、専門調理師を次の目標として考えられます。
専門調理師は、調理の現場で経験を積んだ先に目指せる資格です。
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専門調理師に関するよくある質問

専門調理師を目指す人からよく寄せられる質問をまとめました。
まとめ

専門調理師は、特定の料理分野で専門的な知識と技術を持つことを公的に証明できる国家資格です。
受験には6~8年以上の実務経験が必要で、そのうち3年以上は調理師免許を持って働かなければなりません。
取得すれば技術を資格として示せるほか、調理師学校で教える道も開けます。
新卒の時点では、まず調理の基礎を学べる職場を選ぶことが大切です。実際に調理を担当でき、希望する分野の経験を積めるか、求人内容を確認しましょう。
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