飲食就活生のエフラボトピックス

エフラボ
Worker's ハイ~夢中の仕事~ 株式会社 ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元 巳智雄氏
世界を舞台に仕事をして
世界中の人々を魅了する
海外のユニークなブランドを日本に誘致する一方、自社のブランドで積極的に海外へ進出。世界を意識したブランド戦略で8ヶ国70店舗を出店し、グローバルな展開を拡大しているワンダーテーブル。代表取締役を務める秋元氏の視線も、常に世界へと注がれている。日本からアジア、そして世界へと活躍のステージは着実に広がり続けている。
秋元 巳智雄
1969年、埼玉県生まれ。学生時代にプロント1号店でマネージャー職を務めた縁で卒業後、系列の株式会社 ミュープランニング・アンド・オペレーターズに就職。数多くの飲食店のコンサルティングを手がける。1997年、富士汽船 株式会社に転職し、事業改革を推進。2000年、株式会社 ワンダーテーブルに社名変更し、上場を廃止。2012年、代表取締役に就任する。

食とビジネスをリアルに
感じられるのが醍醐味

大学生のときに飲食店でアルバイトをしていて、20歳で飲食は天職じゃないかと勝手に閃いたんです。自分はこれで生きていくんだと決めました。
バックボーンには生まれ育った環境があります。地主の次男坊に生まれて、子どもの頃から「お兄ちゃんが家を継ぐので、お前は家を出るんだよ」と教えられて育ちました。自宅には広い庭があり友達もたくさん集まってきて、いわゆる〝人気者〟だったんですよ。なので、親戚の人たちからは「商売人に向いているんじゃないの」とよく言われていました。そのうえ、野菜も米も自分の家でつくった採れたてのものを食べて育ちました。今で言うスローフードですよね。私は69年生まれですが、70年代のファミレスやファストフードが急速に増えていく時代の中で、他の人とは明らかに違った食生活を送っていたのです。

食とビジネス、その2つが結びついてピンときたんですよ。食品会社という選択肢もあったかもしれませんが、飲食の仕事にはもっと魅力がある。今はたまたま社長をしていますが、店長でも料理長でもその店で働くアルバイトスタッフの1人でも、商売をリアルに感じられるじゃないですか。たとえば、私はアルバイトの1人だった頃でも「今日はがんばって、ランチで20万円売ろう」と売上目標を決め、それを達成するには何人の来店が必要になるなどと計算していました。あるときには客単価を30円上げるにはどうすればいいのかを考えて、その頃は高かったジャックダニエルをいっぱい売ろうとみんなで競い合い、一番になった人を表彰したりもしました。食とビジネスの両方を毎日、感じながら働けるのが飲食店の醍醐味ですよね。
当時、アルバイトしていたのはプロントの1号店ですが、カフェとバーだけのシンプルなオペレーションだからすぐに覚えて、本社の試験を受けることになりました。私はアルバイトからマネージャーに採用された第1号なんです。そこから深夜のバーで働いたり、新しいカフェやレストランを立ち上げたり、様々な経験をしました。まだWindowsもない時代にパソコンを使って店のマニュアルを作ったり、経済学部だったので卒業論文も飲食店の事業計画書のようなものにしたり、それくらい飲食が大好きでした。いろいろな仲間と出会って、みんなで一緒に店をつくり、みんなと目標を共有するということが好きなんですよ。

高い志を持っていれば
壁は必ず乗り越えられる

飲食を選んで、仕事に対する迷いは全くないですけれど、業務に対する迷いや失敗はこれまでもたくさんありました。それらを乗り越えられたのは、志を持って仕事に取り組んできたからです。
だから、若い人たちには「志を持って仕事をしようよ」と伝えたいですね。漠然とした夢や簡単にクリアできることを志とは呼びません。がんばって成し遂げられる夢、高い目標を持ってもらいたい。どんな業界でも、どんな会社でもいいので、そこで自分はどうなりたいのか、仕事を通して何を目指しているのかという志を持って働くことです。

若いうちはとくに壁がいっぱい待ち受けていて、挫折してしまう人も多い。昨日、叱られたから上司に会うのがいやだとか、その壁のことだけを考えていると逃げ出したくなってしまいます。そのとき俺は一人前のシェフになるんだ、自分はこういう仕事をできるようになりたいんだという想いを持っていれば、必ず乗り越えられるはず。目の前の小さなトラブルにとらわれる人生はつまらないですよ。まあ、自分自身も店のオーナーになりたいとか、社長になりたいとか、若いときには浅はかな目標を立てていたんですけれどね(笑)。でも、それがあったからこそ、いつまでにこのスキルを身につけようとがんばって、1つひとつ壁を越えてきたのだと思っています。

日本の素晴らしい食文化と
おもてなしを世界の人々へ

食は文化であると同時に、日本を代表する重要な産業です。世界を見渡しても、こんなに素晴らしい料理やサービスを提供している国は他にないでしょう。それなのに、飲食店全体のイメージはまだまだ良くないですよね。疲弊した産業と思われているのかもしれませんが、そんな店や会社ばかりではありません。欧米のように、飲食をいかにプライドを持って働ける産業に変えられるか。世界基準で働ける環境づくりを進めています。
こうして国内で働いていても、毎日のように外国人のお客様が来店されます。世界の人々を魅了しないと、私たちの仕事は成り立たなくなってきているんです。日本のおもてなしや食文化が感じられる店をつくっていくことが大切。私の目から見ても、自主的に英語の習得などに一生懸命取り組んでいる人も多くなってきた様に感じます。こうした一人ひとりの様々な努力と企業でつくるブランドを通して日本の食文化を広めていきたいと思います。また、海外ブランドを誘致するなど、世界のユニークな食文化を日本のお客様に紹介するビジネスも進んでいます。

世界を舞台に仕事をして世界中の人たちに喜んでもらえる、そんな業界へと成長させたい。まさに観光立国になろうとしている日本では今、それが求められています。この先5年、10年を見通せば、海外進出も進めなければなりません。日本では人口減少が始まっていますが、世界、とくにアジアやアフリカでどんどん人口が増えています。豊かになってきた国の人たちが母国のもの以外に何を食べたいのかといえば和食。世界的なブームの日本食は今、求められているんです。ところが、世界中の和食を提供する店で日本の企業が関わっているのは1割程度。現地の人が見よう見まねでやっているケースがほとんどです。本物の日本の食文化とサービスを伝えるためにも、世界へ出ていかなければならないでしょう。

当社としてのビジョンは〝卓越したブランドとホスピタリティで世界のお客様を魅了できる外食企業となる〟こと。なにも必要以上にでかい会社をつくろうとしているわけではありません。大きな会社より強い会社、持続可能な会社にすることを目標としています。働く人たちがこの会社を好きで、長く働きたいと思えるような環境をつくっていきたい。プライドとやりがいを持って働き、充実した人生を送ってもらいたいと思っています。

学生の皆さんにも、もっと飲食の世界に興味を持ってもらいたいですね。知識や技術は後からでも学べること。大事なのは人を喜ばせたい、人と一緒に働くのが好きという〝ホスピタリティの種〟を持っているかです。それさえあれば活躍の場は広がっています。マネジメント志向なら支配人として会社をマネージする知識を身につけたり、パティシエとして技術を磨いてお客様をもてなしたり、世界中の人に美味しい料理と感動を広めようというのもいいでしょう。外食ビジネスを通して、自分の道を極めることです。世界を常に意識しながら、プロフェッショナルを目指してもらいたいですね。

2019年2月掲載

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