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食の仕事の可能性05「株式会社 KUURAKU GROUP」海外事業本部 執行役 廣濱成二郎氏
かつて、「食べること」はヒトが生きるための手段だったけれど、今はそれだけじゃない。「食」という仕事の意味はますます広く、面白くなっている。食の仕事を“愉しむ人”になること。その先に広がる未来の地図は、まばゆい輝きを放っている。

おもてなしの文化を 世界に広めたい

無形文化遺産に登録され、ヘルシーでファッショナブルな料理として世界中で親しまれている和食。海外に拠点を置き、和食の魅力を発信する日本の飲食企業も増加している。「単に食事を提供するだけでなく、元気になれたり癒されたりする、日本独自の居酒屋という業態を通して、おもてなしの文化を海外に広めたい」。創業以来、そんな志を持って海外進出を推進している企業がある。それが、居酒屋チェーンを中心とした事業を展開する『株式会社KUURAKU GROUP』だ。
「最初はカナダ。続いてインド、インドネシア、スリランカ、アメリカ。次は中国への出店を計画しています。将来的にはヨーロッパや中東、アフリカにも」と展望を語るのは、『KUURAKU GROUP』の廣濱成二郎氏。各国で事業の立ち上げに携わり、日本以外の国で多様な人たちと一緒に物事を成し遂げることの難しさと楽しさを身をもって知っている。

大学時代をアメリカで過ごした廣濱氏。日本で就職するつもりはなかったが、
KUURAKU GROUPの社風に惹かれ、「この人たちと一緒に働きたい」と入社。15年目を迎える。

インドで「日本式」の人材育成

「インドで事業を開拓していた頃は苦労しましたね。鶏肉を発注したら、気温50度のなかビニールに入れただけの生肉を、歩いて持ってくる。これじゃダメだと」信頼できる食材加工工場を見つけるまで数10社を訪ねて回った。「あるキリスト教徒の従業員が『日曜日は礼拝で教会に行かなければ』と言うから休ませていたのに、どうも寮から出ている気配がない。実際は『たまに行く』くらいでした(笑)」。
周りの日本人経営者からは「インド人は教えても覚えないし、すぐ辞めてしまう。育てようと思うだけ無駄」とアドバイスを受けたという。だが、人材育成を事業目標のひとつに掲げる『KUURAKU GROUP』を代表する立場として、そこで引き下がるわけにはいかなかった。「日本人と同じように信頼して、仕事を任せました。そして、できなければできるまで教える。それを繰り返していたら、ちゃんと頑張るようになってくれたんです」。人種に関わらず、こちらが誠意を持って接すれば、人は必ず応えてくれる。それが、海外ビジネスを通した一番の学びだったという。

人気メニューの炭火串焼き。部位に合わせて一本一本ていねいに焼きあげる。
銀座店で働くネパール人スタッフ。外国籍社員は年々増加しており、現在売上高第1位店舗の店長もネパール人だという。

飲食の可能性は無限大。思い切って飛び込んでほしい

「海外に出ることに尻込みする人もいますが、国内にいたとしても、世界と戦わなければいけない時代がもう来ていると思います」と廣濱氏。
「外国人が経営し、成功を収めている会社もたくさんありますし、日本でしか通じないノウハウだけでは世界のノウハウも持っている人にはかなわないですよね」。日本で活躍する外国人は日に日に増えている。現に、KUURAKU GROUPの売上ナンバーワン店舗の店長はネパール人だ。世界はすでに目の前にある。

スリランカにあるコロンボ店。メニューは基本的には日本と同じ。それでも約8割の客がスリランカ人だという。
インドのグルガオン店。スタッフのほとんどが現地採用。「居酒屋は元気になれる場所」というくふ楽の理念は世界に広がっている。
インバウンドにも積極的に対応。『くふ楽 銀座店』の壁には各国から訪れた人たちの写真とメッセージが。

同社では、若手社員向けの海外研修も行なっている。効果はてきめんで、帰国後には仕事への取り組み方が見違えるように変わるのだという。また、海外を知ることで、日本のよさに気がつくこともある。「日本人の長所って、メニューに書かれていないサービスも自然に提供できるところにあると思うんです。料理を静かに置くとか、目を合わせて挨拶するとか」。それこそがまさに、同社が世界に広めたい『おもてなしの心』。世界に出て、日本のよさを知り、それを世界に広めていく。理想のサイクルが成り立っている。

「漫画やアニメの世界って、すごくワクワクするけど、実際には入り込めませんよね。でも、海外ではリアルに別世界を体験することができる。それは大きな魅力だと思います」。若い人にはぜひ飛び込んでほしいと思いを語る。「食べることと飲むことは世界共通。おもてなしをして、目の前のお客さまに『ありがとう』と言っていただける喜びは、世界どこでも共通です」。
飲食の可能性は日本にとどまらない。そしてそれを掴みにいくのは、自分自身だ。

『株式会社 KUURAKU GROUP』
〒261-7130 千葉県千葉市美浜区中瀬2-6-1ワールドビジネスガーデン マリブウエスト30階
TEL:043-213-2929
公式ホームページ

2020年2月掲載