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2017.7.12

第2回 気軽に使える“船上酒場”プロジェクト

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 皆さんは海の上から東京の街を眺めたことがありますか?今回いただいたプロデュース依頼は東京湾クルージング御座船「安宅丸」(※注1)です。

 元々、「安宅丸」は1988年、瀬戸大橋開通を記念した博覧会のため“海のパビリオン”として造られた船です。その役割を終え、東京進出。現在、東京観光の人気スポットとして運航されています。今年3月には日本を代表するインダストリアルデザイナー水戸岡悦治先生(※注2)により大幅なリニューアルが施行され、まさに“豪華絢爛”な姿に生まれ変わりました。私は昨年末に、船内のお食事、サービスに関する全てのリニューアルプロデュースと運営の依頼をいただき、6月より本格的にスタートいたしました。

 私は以前から東京湾の「屋形船」に興味があり、大好きなのですが、同時に『少しもったいないな…』とも感じていました。屋形船といえば夏の風物詩、お料理といえば“天ぷら”、まとまった人数で予約しないと乗れない、といった敷居の高さと定番感は否めません。私は「季節に関係なく、もっと気軽に、もっと楽しくできるんじゃないかな。」と、事あるごとにいろんな場所で話をしていました。それが言霊となって届いたのでしょうか、今回のプロデュース依頼が舞い込んできたのです。私は即決。『よしっ!年中、気軽に使える船上酒場をつくろう!』と今回のプロジェクトテーマが決まりました。

 以前「安宅丸」で提供されていたお料理は定番パーティーメニューが並ぶビュッフェスタイル。正直、テンションの上がる食事ではありませんでした。今回のリニューアルでは「マグロ」「牡蠣」「ズワイ蟹」をメインとした、見た目にもインパクトあるコースメニューから作りました。「東京」「海」とくれば、「築地」です。外国人観光客にもわかりやすく記憶に残る、築地のイメージが強い食材をラインナップしました。豪快さと調理のシンプルさは船上にピッタリだと思います。

 もちろん、コース料理をご注文いただかなくても気軽に楽しめるのが今回のテーマです。「船上酒場」実現のために14品チョイスのオードブルメニューの他、ドリンクカウンター周りに「デリ・コーナー」を設けました。調理したての気軽な一品おつまみを約40種、お好みでチョイスしていただき販売、お酒とともに甲板デッキにも持っていけるスタイルです。船から眺める東京湾の景色、風に吹かれながらのビールに美味しいおつまみ。これが醍醐味です。

 運行時間や安全上の規制がある船ならではのアイデアでもあります。プロデュース構想は下船した後にも続きます。安宅丸が停船するのは「日の出桟橋」。港周辺には何もありません。ナイトクルーズ終了時間は21時15分。まだまだ宵の口、せっかくの気分がシラけてしまいます。そこで、船の余韻をそのままに新橋や有楽町まで送迎バスを運行し「船の酒場」から「街の酒場」へと繋げていきたいと思います。港から有楽町や新橋まで約8分。逆に、有楽町、新橋から送迎があればクルージングを楽しみたい人も多いはずです。幸い「安宅丸」を運営する今回のプロデュースクライアントである両備ホールディングス(株)はバス事業も行っており早期に実現できそうです。東京の夜の楽しみ方が増えるのではないでしょうか。

 私の全プロデュースの共通テーマは「大人の溜まり場づくり」です。私が手掛けた「恵比寿横丁(※注3)」は、今“出会える酒場”と呼ばれているそうです。区切りのない窮屈ともいえる空間はお酒という共通フィルターを通じて、人と人との区切りをなくし年齢、性別、国籍、社会的身分を超え一体感が生まれます。「船」という独特の環境ならなおさらです。2020年の東京オリンピックに向け、東京には国内、国外から多くのゲストが訪れ、更に活性化されるでしょう。私はこの「安宅丸」が年中、気軽に楽しめる「海の上の大人の溜まり場」そして、「東京湾名物の新しい港文化」としての“船上酒場”となるよう、日々作り込みを続けていこうと思います。ではみなさん、「安宅丸」で海の上から夜の東京を眺めながら乾杯しましょう!

  • ※注1 400年の時を超え江戸時代の豪華絢爛な御座船を再現。最大500名乗船の堂々たる偉容で東京湾「日の出桟橋」より運行中。船内の劇場では劇団四季出身をはじめとしたキャストで演じる「大江戸演武劇」も公演中。東京ゲートブリッジを抜けた際、東京の景色を背景に羽田空港から発着する飛行機を船上から見ることができる日本で唯一の運行コースは圧巻!「御座船 安宅丸」の詳しい情報は→http://www.gozabune.jp/about/
  • ※注2 1947年岡山生まれ。日本を代表するインダストリアルデザイナー。イラストレーター。建築・鉄道車両・グラフィック・プロダクトなどさまざまなジャンルのデザインを行う。なかでもJR九州の駅舎、車両デザインは、鉄道デザインの枠を越え広く注目を集める。主なデザイン作品に、クルーズトレイン「ななつ星in九州」、九州新幹線800系、787系をはじめとしたJR九州の特急車両や、「ある列車」などのD&S(デザイン&ストーリー)列車、岡山電気軌道の路面電車「MOMO」、和歌山電鐵「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」や「たま駅舎」等がある。
  • ※注3 戦後バラック市場から始まり、時が過ぎ老朽化し落書きだらけのシャッター通りと化した恵比寿東口「山下ショッピングセンター」跡に2008年、個性派飲食店の集合体(現在20店舗)「恵比寿横丁」をオープン。たちまち話題となり、昭和を知らない若者から当時を懐かしむオヤジ族まで、老若男女が集まる恵比寿の新名所として、当時以上の賑わいを取り戻している。

浜倉好宣 Hamakura Yoshinori

1967年横須賀生まれ、京都育ち。18才で手掛けた京都駅内の飲食店リニューアルでプロデュースデビュー。90年代、激動の時代を彩った飲食企業各社の成長期の幹部を務める。2008年、自らの原点に立ち返り独立。㈱浜倉的商店製作所設立。「街と人と物件の再生プロジェクト」「全国の生産者と東京マーケットを繋ぐ地方活性化プロジェクト」など、ストーリーとミッションを具現化した数々の飲食店プロデュースに着手。功績が評価され2009年、「外食アワード2009中間流通・外食支援事業者賞」受賞。現在、大手スーパー、レジャー施設、電鉄会社との食環境プロジェクト進行中。自らの発想と手法を惜しみなく手記にした著書に『僕は人も街も再生する酒場のプロデューサー』がある。

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