2018就活生のための
飲食業界研究+企業紹介

レストラン プロフェッショナル論
アナログでも「気持ち」や「努力」が
人との違いを産む世界

【飲食業を生業にするということ】

 2015年の春より山形県南陽市という場所で、ぶどう農家とワイン醸造の仕事をしています。という事は、今の仕事に関しては全くの素人であり新人です。 それ以前はずっと、イタリアンレストランの最前線で働いてきました。でも、わたしの体感としては「働いてきた」というよりも「戦ってきた」というのが本音です。何と戦ってきたのか…。敵はお客様ではありません。もちろん同じレストランで働いていた同僚や部下でもありません。戦ってきた相手は「自分」です。

 少しでもレストランの仕事に関心を持ち「シェフになりたい」とか「パティシエになりたい」とか「ソムリエになりたい」とか「自分の店を持ちたい」とか、そんな憧れを抱いてくれたら嬉しいです。夢を持つのは素晴らしいと思います。出来れば「夢が叶ってほしいな」とも思います。「一年後も同じ思いで働いてほしいな」とも思います。 なんだか否定的なニュアンスになってしまいましたね。 特に否定しているわけではないんです。きちんと現実を知った上で飲食業に入って欲しいんです。

 飲食業は素晴らしい仕事です。お客様に楽しんでいただいて、お礼まで言われる。そんな時には心の底から「やっていてよかった!」と思えます。でも、そこに至るまでが非常に長い職業なのも現実。一歩飲食業の世界に足を踏み入れたらそこはもう別世界です。学生時代にアルバイトしていた? そんなものは所詮アルバイトです。料理をするのが好きだって? 料理させてもらえるのは何年も先の話です。就職した瞬間にあなたはプロの世界に足を踏み入れてしまったんです。

 レストランは個人競技ではありません。料理人とサービスがチームとなってお客様にお食事やワインを提供して楽しんでいただく、団体競技です。 何万というお皿に料理を盛りつけ続けてきた人や、何万回もお客様のグラスにワインを注ぎ続けてきた人が、先輩や上司になるのです。野球に例えたら、少年野球の選手がいきなりプロ野球の球団に就職するようなものです。 しかも、やる仕事は掃除や皿洗い。それが朝から晩までずっと続きます。初めて現場が終わった時にはグッタリとしているでしょう。一週間働いて休日になったらベッドから起き上がれないかもしれません。そして休日が終わると、掃除や皿洗いの毎日が続きます。 考えただけで少しやる気が萎えてしまうかもしれません。「やっぱり飲食業やめようかな」と思うかもしれません。

「ちょっと待ってください」

 ここからが話の本題なんです。長年飲食業をやっていると、イタリアンはもちろん和食やフレンチなどいろんな業種のプロと知り合いになります。お互いの店を行き来したり、時には一緒にイベントを行ったり。そうすると、世間から一流と呼ばれるプロには共通点があるのに気がつきます。

 彼らはみんな凄いスピードで洗いものも出来るし、掃除も恐ろしいほど完璧なんです。しかも、後ろに目が付いているかのように素早く動き回ります。自分の回りの全てに気がつきます。 「なんだ、そういう人しか飲食業で生き残れないのか…」違います。一流のプロも最初は新人だったのです。洗いものが遅くて怒られたり、高価なグラスやお皿を割ってドヤされたり。そんな事を毎日毎日続けてどんどんスキルアップしてきたんです。そしてみんな誰よりも必死に洗いものや掃除をしてきたのです。 最初にやらされる仕事の延長線上にシェフやパティシエやソムリエやオーナーシェフが待っているんです。 まずは教えてもらった仕事を全力で頑張ってください。うまくいかなくても、速くできなくてもいいから、全力で働いてみてください。絶対に手を抜いてはいけませんよ。回りはプロだらけ。簡単にバレますからね。

 そして、毎日毎日続けてください。それが飲食業の基礎体力を作るのです。朝から晩まで戦える身体になるんです。血や肉になるんです。 まずはここから。そして、これ無くしてプロへの道はありません。

 さあ自分との戦いが始まります。 みなさんの健闘を心より祈ります。

藤巻 一臣イタリアンレストラングループ「サローネグループ」の経営、店舗開発、従業員教育、技術指導を担当。関東のレストランシーンでは知らない人はいないほどの人気と知名度を誇る、自然派ワインを愛する個性派サービスマン。2015年より山形県南陽市でぶどう栽培を開始。同年(株)グレープ・リパブリックを南陽市に設立。現在は山形県南陽市でワイナリー設立のため活動中。

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